シミュレーション関係

CST Studio Suiteによる電磁解析計算①高周波回路設計とは

CST Studio Suiteとは

CST Studio SuiteはアメリカのComputer Aided EngineeringベンダーSIMULIAの開発したソフトウェア群です. 本ページで紹介する高周波電磁解析計算に加え, 低周波電磁解析計算や荷電粒子ビームの軌道計算, PCBの動作解析など様々な用途で学術分野産業分野の両方で広く用いられています.

本連載では特に高周波電磁解析計算ツールCST Microwave Studioによるシミュレーション方法を紹介します. 同業者の方の参考になれば幸いです.

高周波回路とは

身近な例では無線LANやモバイル通信といったネットワーク技術を支えるアンテナによる電波の送受信であったり, マイクロ波で水分子の振動を促し食品を内部から加熱する電子レンジなどが挙げられます.

電気回路には一般家庭のコンセントで供給されるような交流回路と, それらをAC/DCコンバーターで変換した後の, 或いは乾電池等から供給される電気のような直流回路があります. 高周波回路は前者の特に周波数が数GHzオーダーの回路を指します. 歴史的にはレーダーなどの軍事技術の発展に伴って様々な分野での応用が始まりました.

実験物理における用途としては, マイクロ波分光, NMR, 荷電粒子ビームの加速器あるいは減速器, イオンや超伝導素子による量子コンピューティングなど枚挙に暇がありません. 高周波の更なる利用は現代人類の発展に不可欠です.

※数GHzあたりの交流を指す言葉としてRFというものがありますが, 業界によって厳密に区別されていたりされていなかったり曖昧に使い分けられているかも?)

高周波回路設計の難しい点

世界中の家庭のコンセントから供給される交流電源の周波数は数十Hzのオーダーでありこれは電磁波の波長にすると数千km程度の波長になります. これに対し数GHzの電磁波の波長は数mから数cmといった, およそ人間が制作する回路のサイズに匹敵する短さになります.
こうなると回路上のあらゆる場所で電気信号の位相が同じだと見なすことはできなくなり, 結果として低周波回路では顕著にならない電気信号の反射などといった振る舞いが最適な回路設計を困難にします.
(逆に特定の周波数での反射を敢えて利用し定在波を作ることでその周波数の電磁波のエネルギーの効率的蓄積を目指す設計思想もあり, 共振回路, 共振器などがそれにあたります.)

例えばPCB基盤やブレッドボードの大きさに対して遥かに大きい波長の音声信号(ヒトの可聴周波数はせいぜい~20kHz)などを取り扱う場合は, 回路上の銅線やワイヤーのあらゆる点で位相差を無視でき, 高々2階の常微分方程式を解くことで回路特性をほぼ完璧に解析出来ます. スピーカーやヘッドフォン, エレキギターのコンパクトエフェクターなどオーディオ機器(の少なくともアナログ回路部分)はこの限りです.
(このように電磁波や素子の空間分布を無視できる回路を"集中定数回路"と呼びます.)
一方で高速通信に不可欠な数GHzオーダーのLAN技術や, 高画質映像の受信に不可欠な数百MHzオーダーの地上デジタル放送などにおけるアンテナ素子, アンテナと他の素子をつなぐケーブル等の伝送線路などの設計には, 上述の理由から幾何的形状を精密に計算し設計してやる必要があります.
(このように空間分布を考慮する必要のある回路を"分布定数回路"と呼びます.)

このように数GHz前後の電磁波,電気信号をやり取りするコンポ―ネントの制作には, 空間分布の考慮, つまりMaxwell方程式を第一原理的に解く必要が出てきます. 物理学科の講義などで無限長の同軸ケーブルや平行平板といった理想的なモデルでは解析解が得られることは学習しますが, 現実の設計においては解析的に解ける状況はほぼ無いでしょう.
しかし現代の計算資源ではこれらを数値解析によって克服することができます. CST Studio Suiteの提供するツールCST Microwave Studioでは有限要素法や有限差分法に基づいて手軽に高周波電磁解析を行うことができます.

有限要素法と有限差分法のアルゴリズム

未. 要望があれば簡単な解説を書きます.

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