前回の記事で導出を確認したJaynes-Cummings 模型を使って, ラビ振動を量子論的に見ていきます. 半古典近似では説明出来ない真空ラビ分裂やMollow tripletといった観測事実を説明することが出来ます.
(参考: 量子光学・光物性 田中耕一郎 , )
Dressed State Pictureとラビ振動

このハミルトニアンの各成分を計算する為には原子系の基底|e>, |g>が成すヒルベルト空間と光子数固有ベクトルの基底|n>,|n+1>(n=0,1,2,…)が成すヒルベルト空間のテンソル積の基底を考えなければいけませんが, 電磁波のパワーを一定に保っているn=N(一定)のような状況では明らかに|e,N>, |g,N+1>によるブラケットのみが非ゼロの値を持つと考えられます.
従って第一近似としてはこれら2つの基底が張る部分系のハミルトニアン(2×2行列)を考えればよく,

というように各成分を具体的に計算することが出来ます.
対角化すると以下のように光ドレスド状態にある2準位系の固有値が求まります.

このように量子論から導出するラビ振動では, 電磁場強度がゼロの極限であっても, あるいは2準位間のエネルギー差と電磁場の周波数が完全にOn-resonantであっても \(\hbar \chi\)分のわずかなラビ振動が起こります. これを真空ラビ分裂と呼ぶそうです.
ブロッホ球で表される光ドレスド固有状態の時間発展
以下のように定義した \(\theta_n\)固有ベクトルはすっきり書き下すことが出来ます.

つまり任意の光ドレスド固有状態は原子系の基底|e>, |g>の適当な重ね合わせ状態(|e>, |g>をそれぞれ北極と南極とするブロッホ球面上の適当な点)で表現することが出来ます.
以下はブロッホ球についての補足です.(参考: EMANの物理学 ブロッホ球 量子コンピューターの議論でよく使う概念。)
