2準位系の量子論

2準位系の量子論②Jaynes-Cummings 模型

ここでは2準位系が電磁波と相互作用, 特に単一の光子と相互作用する場合に導入される種々の近似と, その結果得られる汎用性の高いモデルであるJaynes-Cummings 模型について紹介します.
(参考: 量子光学・光物性 田中耕一郎)

Coulombゲージでの電磁場の量子化

電磁気学の講義で習うようにMaxwell方程式にはゲージ変換という変換に対する不変性(式の見た目が変わらないという性質)があります. 4本のMaxwell方程式をそれぞれ電場と磁場の波動方程式にまとめる際はLorentzゲージというゲージに固定すると上手く出来ます. 一方でCoulombゲージを採用するとベクトルポテンシャル\(A\)の空間3次元成分を横波の自由波として展開することが出来ます.
(デメリットとしては第ゼロ成分が0になりLorentz共変性を諦めなくてはならず特殊相対論との整合に対して不安を感じるという点があります.)

Coulombゲージでベクトルポテンシャルを展開(参考: Wikipedia-Quantization of the electromagnetic filed- )

これがいわゆる電磁波は横波とされる根本的な理由といっていいでしょう. しかし境界条件によってはTEモードやTMモードのように縦波の電磁場成分を持っているように見えることがあるので混乱しやすいトピックである気がします.
このようにフーリエ級数展開をした以上, 係数の\(\boldsymbol{a}\)と\(\boldsymbol{a}\dagger\)が量子化の宿命として演算子になっている訳です(他に演算子になれる自由度は無い).

単一モード電磁波の想定と2光子遷移過程の無視

レーザーもそうですが基本的にはマイクロ波も少数特定のモードのみを発振させた結果コヒーレントに伝播していきます. 従って応用上は単一モード電磁場との相互作用に興味があることが多く, ハミルトニアンを以下のように近似します.

従って,

このように相互作用項として第3項の形のみを持つハミルトニアンに落ち着きます.

1光子相互作用項の時間依存性

1光子相互作用項\(\scr{\hat{H}_{i1}}\)の各項の時間依存性をハイゼンベルグ描像で見ていきます.
ここで基底状態|g>,励起状態|e>は互いに異なるパリティを持つと仮定します. 原子や分子に束縛された電子の1光子遷移では角運動量量子数の異なる状態間を遷移しやすいこと(選択則)などを考えると妥当な仮定です.
例えば|g> → |e> 遷移の期待値(行列成分\(H_{eg}\))は以下の様に計算できます.

他の成分も同様に計算するとこの相互作用ハミルトニアンは\(|e>,|g>\)を基底として次のように展開できます.

回転波近似とJaynes-Cummings 模型

いよいよ先ほど導いた \(\scr{\hat{H}_{i1}}\) の行列要素の時間発展を見ていきます.
固有ベクトル\(|e>,|g>\)はこれらの間の遷移周波数をω₀とすると,

\(\hat { \scr{H_m} } = \frac{ℏω₀}{2} ( -|g><g| + |e><e| ) \)

を満たします.
電磁場の周波数をωとすると \(\scr{\hat{H}_{i1}}\) の各項は以下のように時間発展します.

このとき時間依存性は左から順に
\( e^{-i(ω-ω₀)t} , e^{i(ω+ω₀)t} , e^{-i(ω+ω₀)t} , e^{i(ω-ω₀)t} \)
であり, 真ん中の2項は共鳴周波数付近で他の2項より速く振動することで長時間の観測において平均化されるため無視できます.
(Rotating Wave Approximation, 回転波近似などと呼ばれる)
従って(\scr{\hat{H}_{i1}})は回転波近似のもとで次のように表せます.

以上, 単一モード電磁場の2次の項の無視及び1次の項(相互作用項)での速い振動項の無視(回転波近似)による2準位系をJaynes-Cummings 模型と呼び以下のハミルトニアンで表されます.

次回はこの模型を用いてラビ振動を量子論的に見ていきます.


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